息子の言語 その2

マケドニアでの妊娠出産のお話の続きの前に、
現在3歳8か月となった息子の言語の状況について、色々と興味深いことがあるので、
忘れないうちにここへ記しておきたいと思います。

前回息子の言語についてお話しさせて頂いた時(息子が2歳3か月時)は
まだマケドニア語と日本語がごっちゃに混じっていましたが、
現在ではすっかりマケドニア語と日本語の区別ができていて、
双方をごっちゃにして話すことはありません。

つい先日も、家族で散歩していた時のこと、ダーリンが息子にマケドニア語で
「アイスクリーム食べたいかママに聞いてみて」
と言うと、息子は私に日本語で
「ママ、アイスクリーム欲しい?」
と聞き、私が
「アイスクリーム欲しい!」
と言うと、
「ママ、欲しいって言ったよ」
とマケドニア語でダーリンに返事。そしてダーリンが
「じゃ、ママは何味のアイスクリームが欲しいか聞いてみて」
と言うと、きちんとママは何味が欲しいか日本語で聞いてくれたのです。
そして、私が
「イチゴ味がいい」
と言うと、マケドニア語でイチゴが何だったか思い出せない様子で、
「え~と、え~と、ママは赤いやつが欲しいんだって」
とダーリンにはちゃんとマケドニア語で返事。
マケドニア語と日本語の切り替えが深く考えずに頭の中で
”ポンポン”とできている様子です。

こうして私と話すときは日本語で話してくれますが、
昨年の5月に一度日本に帰国して以来、一年以上日本には帰っておらず、
マケドニアの幼稚園に通い、マケドニアのババとも一緒に暮らし、
マケドニアでの生活にどっぷりはまっているので、
息子のマケドニア語はどんどん上達しており、
一人遊びをする時なんかもマケドニア語で話したり、と
現在の息子の第一言語はマケドニア語なのではないかと思います。

そんな息子の日本語で、少し惜しいことは、
上の方=2階(ニカイ)
となっているようで、何か高いところにあるものを取ってほしい時、
「ニカイにあるの取って。」
背中がかゆい時、私に背中をかくように命じてくるのですが、
「もっとニカイ掻いて。」
となってしまいます。
その度に「これはニカイじゃなくて”上の方”って言うんだよ」、と教えるのですが、
なかなか直りません。
また、
さっき=昨日
で、今朝あったことも、数分前に起こったことも全部
「昨日これしたね~」、とか「昨日こんなことがあったね~」
と言ってくるのです。
使う言葉が少し間違ってるんですが、概念は合っているようで、
こうやって子供は言葉を習得していくのかな、ととても面白いなと思っています。
そしてこれをきちんと正しく直してあげるのは私の仕事なのですが・・・

また、昨年の夏のこと、普段はスコピエにある幼稚園に通っているのですが、
少しだけスツルガにある別の幼稚園に通うことになり、
初日のみ息子と一緒に教室の中に入って様子を見学させてもらいました。
その時息子は皆の輪に入ろうとせず、一人でおもちゃで遊んだりしていました。
その後もお友達の誕生日会なんかに行って、皆が一緒に踊ったりしている中
息子がなかなか皆の輪に入ろうとしない様子を何度が見ていたので、
やっぱり言葉が良く分からないのかな、と少し不安に思っていました。
でも息子が3歳になる少し前に幼稚園のお友達の誕生日会に訪れた時のこと、
あるお友達のお母さんに、
「二コラ(息子)のママでしょ?私の息子が幼稚園から家に帰ってくると、
いつも二コラの話ばっかりするのよ。」
と声をかけられました。
その後別のお母さんからも、
「うちの子もいつも二コラの話をするのよ。二コラが何した、とか、
二コラとこんなことした、とか」
と、幼稚園のお友達が息子の話を家でしている、ということをその時初めて聞き、
とてもびっくりしたと同時にとても嬉しく思いました。
その後もたびたび幼稚園のお友達の誕生日会に訪れ、様子を見ていると、
だんだんお友達と一緒に遊ぶようになり、3歳になった頃から、
急にお友達とも上手にマケドニア語で会話をするようになっていました。

最近ではYou Tube動画を自分で色々見たりしていて、
英語のアルファベットの歌をA~Zまで全部上手に歌います。
そしてアルファベットのAを見かけると、
「これは”A”だよ」
と教えてくれます。でもひらがな、カタカナには興味がないようで、
「これは”あ”だよ」、と私が話しても、知らん顔しています。
そして英語で数字を数えたり、数字をみるとそれが何か日本語でもマケドニア語でも
教えてくれるのですが、
「1~10まで日本語で数えて」、と言うと、途中で分からなくなってしまって、
まだ全部上手に数えられません。
色は基本的な色は日本語、マケドニア語、英語それぞれ知っており、
”青色”は日本語、”плаво”はマケドニア語、”Blue”は英語、と
それぞれ別の言語であることは理解できているようです。

できること、できないことが色々あります。
3歳なので、当たり前なのかな?とも思いますし、
このままで大丈夫かな?と心配になることもあります。
そろそろ文字も読めるようになって欲しいな、とも思うのですが、
興味がないことには見向きもせず、強要すればすぐに嫌になってしまうので、
とにかく息子のペースを大事にし、これからも成長を見守ってくしかないかな。
ただ、子供が言葉をきちんと身に着けるには周りの環境も影響すると思うので、
親としてできる限りのサポートをしていきたいと思います。

息子の言語

子育ての話題がどうしても多くなってしまいますが、
息子の言語についてお話したいと思います。

子供の言葉についてどのように教育していくべきか、ということは
息子が生まれる前からダーリンと色々話し合ってきました。
様々な文献をあさったり、国際結婚をして海外で暮らしている方の
本を読んだり、バイリンガルやトリリンガルの方たちの
生い立ちや言語習得背景について色々情報を集めたりしました。
そして、私たちは1人一言語に徹底するということに決めました。
つまり、私は息子と話す時は、日本語のみ、
ダーリンはマケドニア語のみで話すのです。
例えば一緒に夕食を食べている時も、
私は子供に対して日本語、ダーリンはマケドニア語、
私とダーリンで話す時は英語、
当の息子は日本語とマケドニア語で、
という感じです。

息子の言語習得にはとても興味があり、色々注意しながら
様子をみているのですが、
2歳3カ月となった息子は、どちらの言語も理解し、
今のところ両言語を同じくらいのレベルで発しています。
どうやら物事には二つ以上の名前がある、ということを
ずっと小さい頃から認識しているように思います。

例えば、”りんご”、はマケドニア語で、”јаболко”
りんごをみながら、“りんご、јаболко” と繰り返して言ったり、
”これ”、は ”ова”
何か欲しいものがあると、指をさしながら
”これ、ова、これ、ова” と繰り返しながら言ったりします。

私と”りんごおいしいねー”と言いながら一緒にりんごを食べている時に、
ダーリンが ”што е ова?(これは何?)”とマケドニア語で聞くと、
”јаболко!”、と答えたり、
私のことはたいてい”ママ”、と呼びますが、
ダーリンが私のことを名前で呼ぶのを聞いていて、
時々”マリーー!!”と名前で呼んだりします(笑)。
ので、”りんご”も”јаболко”も同じもの、
”ママ”も”マリ”も呼び方が違うだけで同じ人、
というのをちゃんと分かっているんですよね。

ただ、まだはっきり使い分けている、という感じはなく、
私が日本語で、”ココア欲しい?” と聞いても
”Не сакам(いらない)”
とマケドニア語で返事をしたり、
他の人がマケドニア語で話しかけても
日本語で返答したり、と
自分の気分でその時思いついた言葉を発するという感じに
見受けられます。
でも面白いな、と思うのは
日本語で”欲しい?”と聞いていることに対して、瞬時にマケドニア語で
”いらない”、と返事をすること。
日本語の”欲しい”とマケドニア語の”сакам(欲しい)”が、
同じ意味であるということをきちんと理解している、というのが
すごいなぁと親ながら感心してしまいます。

少々複雑な言語環境で育っているということもあり、
周りの子どもと比べたり、周りの子どもより、遅いかもしれない、と
不安に思うことはあまりありませんが、
日本人の同い年くらいの子供がどれくらいお話をして、どれくらいの
コミュニケーションがとれるのかな、ということには
とても興味はあります。
実際どうなんだろ?
ただ、今一番大事なことは、息子が成長している
という事実だと思っています。
そのペースが早いのか遅いのかは良く分かりませんが、
確実に先週できなかったことが今週できるようになった、
一か月前には分からなかったことが、今月になって
言葉で表現できるようになった、という
成長を日々感じることができます。

将来自分の第一言語を決めるのは息子本人であり、
私たちが決めることはできません。
今理解している言語も、今後育つ環境によって、
どんどん変化していくと思います。
それでもマケドニア語も、日本語も彼の母国語です。
どちらの国にも彼の家族がいます。
家族間でも言葉を理解することができず、
取り残されたような気持ちになるのはつらいこと。
両方同じようにずっと話すことができるかどうかは、
私たち両親の責任でもあると思っています。

私自身は日本人の両親の間に、日本で生まれ、
日本で育ったので、
数ヶ国語を同時に習得するということが、
どういうことなのか、想像もできませんが、
どうにか息子が上手に両言語を習得し、
使えるようになってくれるといいな、と思うばかりです。